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ムラバヤシユウキオフィシャルブログ

対峙するおじさん

便器と対峙するおじさん

これは社会人時代の話です。会社に70歳を超えた高齢の社員の方がいたのですが 、就業後、男子トイレの小便器のところで一緒になったときのことです。僕が入っていったときには既に小便器と対峙していたおじさんは、僕が出るときもまだ対峙していました。

その時は何も会話をせずに僕は出ていったのですが、その後周辺のものを5分ほど整理し、帰るときになってもそのおじさんが席に戻っていなかったので、まさかと思ってトイレに行ってみると、おじさんはまだ小便器と対峙していました。まったく体制を変えずに5分以上。 尿は出ていないですが、いつ出てもいいように準備は万端という感じです。

僕は、失礼とはわかりつつも、少し猫背ぎみに5分以上小便器と対峙し続けているおじさんに聞きました。

「トイレ長すぎませんか?」

すると、おじさんは優しい笑顔を向けてこう答えてくれました。

「最近は尿意があるのか無いのかも分からん。 だからこうやってじっと時がくるのをまっているのだよ」

と。それを聞いて、僕はなんかジーンときてしまいました。尿意があるからトイレに行くのではなく、ただ尿が出るのを待つおじさん。せわしない現代社会、携帯で連絡が簡単に取れる世代の僕たちは、腹が減ったらデリバリーを頼み、待ち合わせに遅れたら電話で連絡して終わり。告白もLINEで済ませるような、全てが使い捨て、簡単に済ます時代で、おじさんはただただその場に立っている。出ようが出まいが関係ない。そこに立って、いつ出てもいいよという形でじっと待っている。その姿にいたく感動したのだと思う。僕もそんな人間になりたい。

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