深い河は遠藤周作の晩年の大作で、1994年に毎日芸術賞を受賞し、話題となった作品です。個人的には遠藤周作の作品の中でもその集大成が「深い河」であると思っています。私は作家の中でも遠藤周作が大好きで、長崎の遠藤周作文学館へ行ったり、作品の舞台となった土地を巡ったりするほどのファンで、遠藤周作作品はほとんど読んでいますが、その中でもやはり深い河は特別思い入れがあり、一番好きな作品です。
過去の作品からのオマージュと思われるものが色々出てくる
深い河には過去の遠藤周作作品のオマージュではないかと思われるような内容が結構あります。沈黙のキチジローやロドリゴであったり、留学で描かれたフランス留学時代に感じたヨーロッパの宗教に対する感覚の相違に苦しむ主人公等、これぞ遠藤周作作品の集大成といった感じがします。カトリックの家に生まれながら、自分の宗教観に苦しむ大津や、満州で幼少期を過ごしたという沼田は遠藤周作の生い立ちとまったく同じで、作者自身の投影がされていると思います。
主人公5人それぞれの生き方
深い河は5人の主人公がそれぞれの視点で話が進みます。遠藤周作作品の多くが人間の弱さをテーマにした作品であり、遠藤周作本人も日本人に合ったキリスト教を探してきたので、今作も日本人と神、日本人と宗教ということを軸に話が進められていきます。主人公それぞれが弱さや、傷をもっており、小説の舞台であるインドへ向かい、自分と向き合っていくという内容です。
深い河は遠藤周作の集大成
小説の詳細は深い河を読んで頂きたいのですが、作者が70歳の時に書き上げた大作はいつ読んでも感動します。個人的に遠藤周作が好きというのもあると思いますが、人間の弱さや、葛藤を書かせたら一番だと思っています。2017年に沈黙がスコセッシ監督、窪塚洋介、浅野忠信出演で映画化されますので、その影響で、遠藤周作の作品が注目されることになるのはうれしいです。沈黙、深い河の他にも、海と毒薬、侍、わたしが棄てた女、等多くの名作があるので、是非そちらも読んでもらいたいです。孤狸庵というペンネームで書かれたエッセイは気軽に読むことが出来、今読んでもすごく面白いのでおすすめです。私は遠藤周作の作品に多くの影響を受け、自分の弱さや、汚い部分も含めて、生きていこうという気持ちになりました。これからも定期的に再読していきたいと思っています。
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